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MATT POND PA

木曜日, 12月 15th, 2011

ニュー・イングランド出身、フィラデルフィアを経て、現在はブルックリンで活動するシンガー・ソングライター、マット・ポンドを中心とした5人組。元々メルズ・ロックパイルというロック・バンドをやっていたマットが、よりパーソナルで真摯な表現に向かうために、移り住んだフィラデルフィアで、知り合ったミュージシャンを集めて、マット・ポンド・ピーエーを結成。PAはもちろんフィラデルフィアのこと。オリジナル・ドラマーには、マザリン(PUMAのCMでお馴染み)やレノラ、ツイン・アトラスのメンバーとしても知られるショーン・バーンの名前もある。98年に『Deer Apartment』でデビュー。ほとんど自主制作的にリリースされたそれは、オンライン・ショップのCD NOWが催した「未契約バンド・コンテスト」でトップを取るという栄誉に輝く。その後、フランクリンやAM/FMのメンバーでもあるブライアン・ソケル主宰によるフィラデルフィアの重要レーベル、file 13から、2nd『Measure』(2000年)、そしてEP「I Thought You Were Sleeping」(2001年)をリリース。ヴェリー・セクレタリー、テッド・レオ、アスペラらとツアーする。2002年、レイチェルズのメンバーでもあったイヴ・ミラーもチェロとして参加するなど、メンバーを一新、レーベルも前述のAM/FMに続いて、イリノイのPolyvinyl(オーウェン、ジョーン・オブ・アーク、ブレイド、31ノッツ、アイダ、オブ・モントリオール、アーキテクチャー・イン・ヘルシンキらを擁する超優良レーベル)に移籍し、7”「This Is Not The Green Fury」、そして3rdアルバム『The Green Fury』(2002年)をリリース、P-VINEより日本デビューも果たしている。年内にもう1枚、4th『The Nature Of Maps』をリリースし、マットはニューヨークはブルックリンに移住する。ここで再度、メンバーを一新し、さらにレーベルもNYベースのAltitudeに移籍。5th『Emblems』(2004年)をリリースし(同アルバムは、翌年、カイザー・チーフスやオーディナリー・ボーイズでお馴染みのb-uniqueからUKリリースされている)、キーンとの大規模なUSツアーも成功させている。2005年、ニール・ヤングやリチャード・トンプソン、ニュートラル・ミルク・ホテルらのカヴァーも収録したEP「Winter Songs」をリリースしたのち、6th『Several Arrows Later』をリリースする。この間、FoxのTVドラマ「The O.C.」に、彼らによるオアシスの「Champagne Supernova」のカヴァーがフィーチャーされ、彼らの知名度は飛躍的にアップする(ちなみに同サントラは、他にもデス・キャブ・フォー・キューティー、アルバム・リーフ、スプーン、イールズ、ピンバック、インターポール等々といったバンドの楽曲を多数収録し、近年のUSインディー・ブームに一役買っている)。同年、リズ・フェアやガスターとのツアーも大成功に終わる。2006年、さらにメンバー・チェンジを行いながらも、ゴメズ、ユース・グループらとツアーし、さらにティーヴィー・オン・ザ・レディオ、ヨ・ラ・テンゴ、ベン・ギバード(デス・キャブ・フォー・キューティー)、ザ・フォーマット、ナダ・サーフ、ヴォックストロットなどと共演するなど精力的にライヴを行う。2007年6月、現在のラインナップとなって初の作品「If You Want Blood」(EP)をリリース。そして、2007年秋、2年ぶり、7枚目となるフル・アルバム『LAST LIGHT』が到着。彼らの大きな特徴であった叙情性の高いストリングスやフラジャイルな浮遊感よりも、より骨太でソリッドなロック・バンド・サウンド、そして“うた”が完全に前面に出て、聴く者を圧倒する。長くアンダーグラウンドな活動をしてきた彼らが、現在ではUSの主要都市では1,000人規模のホールもソールドアウトにしてしまうという状況に対峙し、そこから決して逃げることなく、辿り着いた回答として、あまりにも完璧すぎる13曲。「Taught to Look Away」で見事なデュエットを披露しているニーコ・ケースをはじめテイラー・ロック (ルーニー)、イザベル・ソーレンバーガー(バルド・ポンド)、ロブ・シュナッフ(エリオット・スミス、ベック)、トム・モナハン(パーニス・ブラザーズ、リリーズ)等、豪華ゲスト陣が華を添えている。このアルバムをひっさげて、2007年12月、待望の初来日を果たしている。

MAKE BELIEVE

木曜日, 12月 15th, 2011

キャップン・ジャズ、ジョーン・オブ・アーク、ゴースツ&ウォッカなど日本で人気の高い数々のバンドに関わってきたメンバーによって2003年にシカゴで結成された4人組。録音がメインであるジョーン・オブ・アークのライヴ・バンド化を試みるところから始まり、メンバーのケミストリー重視で、よりコラボレーティヴな“バンド”としての曲作りによってメンバーの強烈な個性がぶつかり、この4人でしかありえないメイク・ビリーヴ・サウンドが誕生した。2004年5月Flameshovel RecordsよりEP「MAKE BELIEVE」でデビュー。同年11月に7″をリリース後、満を持して2006年8月、日本2ヶ月先行で、スティーヴ・アルビニ録音による1stフル・アルバム『Shock Of Being』をリリース。自由でエクスペリメンタルな要素の強いジョーン・オブ・アークと違い、4人がそれぞれパートを固定し、4人だけで鳴らすバンド・サウンドをストイックに追及していく様を捕らえた最良のドキュメントとなり、高い評価を得る。2006年1月、初来日ツアーを敢行。一人ユニットLove Of EverythingとしてOwenに勝るとも劣らない唄心を披露したボビー、永遠にタッピングを続けるサム、ドラムを叩きながらキーボードを弾くというありえない離れ業をさらりとこなすネイト、その上で、Calvin Johnsonもかくやというぐらい自由すぎるヴォーカリゼーションとステージングを披露するティムは、観る者の脳裏に強烈なインパクトを残して去っていった。その後、ドラムのネイトが、公然猥褻罪で収監されるというアクシデントを乗り越え、同年9月、2ndアルバム『Of Course』リリース。同時発売されたティムの弟マイク・キンセラによるソロ・ユニット、オーウェンの4th『At Home With Owen』とともに、その年の秋冬をキンセラ一色に染め上げた。2007年1月には、メイク・ビリーヴ&オーウェンによるダブル・ヘッドライナー・ジャパン・ツアーも成功させた。その後もSpin.comのArtist Of The Yearにノミネートされるなど、誰もが今後の活躍を疑わなかった中、フロント・マンであるティムが、フロント・マンとしての重圧と、ツアーのストレスに耐えかね、突然脱退を表明。バンドは空中分解するかに思えた。残された3人は、このままインスト・バンドで行くのか、新しいヴォーカルを迎えるのか、試行錯誤を重ねたが、結局この完成されたメイク・ビリーヴ・サウンドにおいてティムが不可欠なのは言うまでもなく、結果、再び4人でスタジオに入ることになった。前作同様、Electrical Audio Studioにて、録音にPelican、Magnolia Electric Company、Neurosisなどを手がけるGreg Normanを迎えて制作された3rdアルバム『GOING TO THE BONE CHURCH』では、これまでのゴタゴタが嘘のように、いとも簡単に、この4人でしかありえない唯一無二のケミストリーを再創出。現在も、世界最高のオリジナリティを誇るバンドであることを証明してみせた。今後、本家ジョーン・オブ・アークとしての活動もある中、彼らがどうなっていくのか、一瞬たりとも目が離せない。

LYMBYC SYSTYM

木曜日, 12月 15th, 2011

アリゾナ郊外で生まれ育ったMichaelとJaredのBell兄弟は、2001年後半よりLymbyc Systymとして活動を開始する。アーティスト名は「(大脳の)辺縁系」を意味するLimbic Systemの母音をすべてyに変えたもの。2006年、セルフ・リリースによるEP『Carved By Glaciers』にてデビュー。Tortoise、My Bloody Valentine、Explosions In The Sky、Four Tet等からインスパイアされた彼らの楽曲は、弟ジャレドが紡ぎ上げるヴィンテージ・キーボードとアナログ・エフェクトによる幾重ものレイヤーに、兄マイケルによるダイナミックなドラミングとラップトップによる複雑なプログラミングが見事なコントラストを織り成し、温かくも攻撃的、荒々しくも繊細な、独自のサウンドスケープを鳴らし、ポスト・ロックやインディー・ロックやフォークトロニカといったジャンルを軽く超越することに、若くして早、成功している。その無限なる可能性を感知した偉大なる先達、The Album LeafやMice Paradeは逸早く彼らをオープニング・アクトに抜擢した。そして2006年9月、Mush Recordsと契約。1stアルバム『LOVE YOUR ABUSER』をリリース。ツアー・メイトであるJimmy Lavelle (The Album Leaf)や、Dylan Christy (Dylan Group、Mice Parade)等の協力も得て制作された、初のフルレングスとなる同作は、その濃密なる10曲で、インストゥルメンタル・ミュージックがこれまで成しえなかった領域のエモーションまでも表現した傑作に。その後も、Four TetやSaxon Shoreといったバンドと共演を重ね、その勢いのまま同年6月に初来日ツアーを敢行。日米ともにレーベルメイトであるBoy In Static、4 bonjour’s partiesとともに「Mush Records/& records Showcase Tour 2007」として行われたツアーでは、ライヴ・バンドとしてすさまじいパフォーマンスを見せ付け、「2人バトルス」とも称される。その後も、The One AM Radio、Montagらと全米ツアーを行い、評価をゆるぎないものとする。2008年3月、『LOVE YOUR ABUSER REMIXED』が完全自主制作によって、緊急リリース。盟友The Album Leafをはじめ、Bibio、Daedelus、The One AM Radioなど錚々たる面子が1stの楽曲を調理した超豪華リミックス・アルバムとなる。また、この頃、2ndアルバムの制作を進める傍ら、マイクがカナダのCrystal Castlesのサポート・メンバーに抜擢されツアーに参加、サマー・ソニックで来日も果たしたのをはじめ、バンドとしてもHer Space Holiday、The One AM Radio、Andrew Kenny(The American Analog Set)などのバック・バンドを務めたり、Bloken Social Scene、The Books、This Will Destroy Youらとツアーをするなど、精力的な活動をこなす。2009年1月、ツアーの縁から発展し、This Will Destroy YouとのスプリットEPがMagic Bullet Recordsからリリース。そして10月、2ndアルバム『SHUTTER RELEASE』が遂にリリース。This Will Destroy YouやBalmorhea、Slow Sixといった友人らの協力を得、ミックスをModest Mouse、St. Vincent、 Explosions in the Sky、Black Mountainなどを手がけたJohn Congletonに委ねた今作は、1stで見せた大器の萌芽が、その後の充実した活動によって結実した様が、リアルに刻印された一枚に。オルガン、ヴィブラフォン、アナログ・シンセ、バンジョー、アフリカン・パーカッション、トイ・ピアノといったお馴染みの素材だけでなく、友人達によるストリングス、ホーン、ギター、ラップ・スティール等々、あらゆる素材が見事に調和し、息を飲むほど美しいサウンドスケープを紡ぎだす。日本盤はThis Will Destroy YouとのスプリットEPに収められた3曲を追加収録し、世界に先駆けてリリースする。2010年6月と2011年7月に、アジア・ツアーの一環で緊急来日、グッドラックヘイワ、4 bonjour’s parties、Caroline、oono yuukiらと共演している。2012年1月、マイクはKNESSETのサポート・ドラマーとしてまたしても来日。そして9月、3年ぶり、Western Vinylに移籍して初のアルバム『SYMBOLYST』リリース。

HEADLIGHTS

木曜日, 12月 15th, 2011

イリノイ州シャンペーンにて活動するクァルテット。00年代初頭に、Kindercoreに所属していたMaseratiと、Parasolに所属していたAbsinthe Blindのメンバーであったトリスタン・レイトを中心に結成。初期の名前やメンバーが流動的な時期を経て、2004年よりトリスタン、エリン、ブレットのメンバーで、ヘッドライツとして活動を始める。Adam Schmittをプロデューサーに向かえ「The Enemies EP」を自主制作。Velocity GirlやLilysといった90年代のUSノイズ・ポップを00年代のエレクトロニクスで甦らせたようなそのサウンドが話題となり、ライヴと通販だけのリリースにもかかわらずソールドアウトとなる。その話題を聞きつけたPolyvinylと契約。2005年11月に「The Enemies EP」を再発する。2006年にカナダのThe Most Serene Republicとスプリット・シングルを出したあと、1stフル・アルバム『Kill Them with Kindness』をリリース。各音楽誌で絶賛を浴びる。2007年、Decibullyのニックと、地元の盟友Shipwreckのジョン・オーウェン(ギター)が加入し、5人組となる。2008年2月、2ndアルバム「Some Racing, Some Stopping」リリース。またPitchfork限定でDead OceansのThe Evangelicalsの「Skelton Man」のカヴァーを発表する(本盤にボーナストラックとして収録)。The Evangelicalsとのツアーを成功させる。同年12月、初のリミックス・アルバムをリリース。リミキサーには、The Album Leaf、Cale Parks(Aloha)、T.J。Lipple (Aloha)、Uzi & Ari、Jason Caddell (The Dismemberment Plan)、Via Satellite、Casiotone for the Painfully Alone、Son Luxといった豪華な面子が揃い話題となる。そして2009年、1月にリリースされたミニ・アルバム「Keep Your Friends and Loves Close. Keep the City You Call Home Closer」に続いて、3作目のフル・アルバムとなる『WILDLIFE』が到着。当初難航したレコーディング・セッションを経て、ジョンが脱退。4人組として再始動した初のアルバムとなる本作は、前作同様、ブレットによるホーム・レコーディングで制作された。さまざまな喪失があり、へヴィな状況ではあったが、そのことがトリスタンとエリンのソングライティングに深みを与え、また4人のバンドとしての結束を高め、結果、これまで以上に瑞々しく輝く歌達に結実している。60年代ポップスや90年代のギター・ポップが持つきらめきを、現代のセンスとフォーマットでヴィヴィッドに響かせることができる稀有なバンドであることを証明したこの傑作3rdアルバムで、遂に日本デビュー。

CAMERA OBSCURA

木曜日, 12月 15th, 2011

スコットランドはグラスゴー出身の男女混合5人組インディー・ポップバンド、カメラ・オブスキュラ。パステルズやティーンエイジ・ファンクラブ(現ドラマーのフランシス・マクドナルドはバンドのマネージャーも担当)、ベル・アンド・セバスチャンと多くのバンドを輩出してきた音楽都市グラスゴーで1996年に結成された彼らは、2001年にアルバム『Biggest Bluest Hi Fi』でデビュー。どこか懐かしい60年代風の楽曲とさわやかなハーモニー、そしてなによりグラスゴー・バンドならではの心の琴線に触れる温かなメロディーで人気となり、ここ日本でも話題に。また、2nd、3rdがスーパーチャンクのレーベルMERGEからリリースされ、アメリカでも大ブレイクを果たす。そんな彼らが、約3年ぶりに名門レーベル4ADに移籍して2009年にリリースした最新作『My Maudlin Career』を携えて来日。東京2デイズとなる公演は、クッキーシーン誌の協力のもと、カジヒデキ、フルカワミキ、OGRE YOU ASSHOLE、STRUGGLE FOR PRIDE、4 bonjour’s partiesも参加した豪華なイベントとなった。この記念すべき初来日を記念して、2006年にスペインのエレファントよりリリースされた名盤の誉れ高い3rdアルバム『LET’S GET OUT OF THIS COUNTRY』を、7”のみに収録された曲など5曲ものレアトラックを追加収録して邦盤化。

ELECTRIC PRESIDENT

木曜日, 12月 15th, 2011

2004年よりフロリダ州ジャクソンヴィルにて活動するベン・クーパーとアレックス・ケインによるデュオ・ユニット。ベンは13歳の頃より、様々なバンドでギター、ドラム、ヴォーカル、ベースなど様々なパートを担当する。アレックスはThe Helicopter Projectというバンドで、ベースとして音楽活動を開始。後にベンがヴォーカルとして加入する。こうして出会った2人は、2000年頃から一緒にアレックスのベッドルームや、ベンの倉庫などでレコーディングを開始する。2004年にユニット名をエレクトリック・プレジデントとする。2006年1月に、ムームやスタイロフォームを輩出するドイツのエレクトロニカ系レーベルMorr Musicよりアルバム『s/t』にてデビュー。同年6月、7”「You Have The Right To Remain Awesome, Volume 1」「You Have The Right To Remain Awesome, Volume 2」を2枚同時リリース。この時点で、23歳(ベン)と21歳(アレックス)という若さであった。ラップトップを駆使したエレクトロニカを基調としながらも、アコースティックな肌触り、ロック的ダイナミズムを感じさせるリズム、インディー・ポップ的な遊び心、そして何よりも、デス・キャブ・フォー・キューティーのベン・ギバートやアメリカン・アナログ・セットのアンドリュー・ケニーにも通じる、心に染み入る唄心が絶賛される。ポスタル・サーヴィスや、同レーベルのスタイロフォームやゴー・ファインド、アンチコンのクラウドデッドなどを引き合いに出されながら、ここ日本でも専門店を中心に大きな話題を呼び、輸入盤ながら3,000枚以上ものセールスを記録する。本国USでは、アルバム・リーフやピンバック、スプーンらとともにドラマ「The O.C.」の挿入歌に1stアルバム収録曲が使用され、知名度が飛躍的にアップする。2007年1月、ベンのソロ・ユニットであるラディカル・フェイスのアルバム『Ghost』が、同じくMorr Musicよりリリース。1人ですべてをコントロールすることにより、彼の多才さや完璧主義ぶり、シンガーソングライター的資質が露になった素晴らしい作品で、こちらもスマッシュ・ヒットを記録する。2008年6月、エレクトリック・プレジデントとしては2年半ぶりとなる2ndアルバムにして、日本デビュー・アルバム『SLEEP WELL』(YOUTH-051)をリリース(ボーナストラックとして、前述の2枚の7”に収録された全4曲を収録)。「夢と悪夢」をテーマに作られた楽曲集となったほん同作は、ラディカル・フェイスの流れを汲む、ストーリー性、作家性の高い作品に。前作同様、うきうきするような爽やかさ、陽だまりのような温かさを感じさせるポップさはもちろん、サウンド、唄ともに、よりディープなリスニングに堪えうる深み、クオリティを獲得した大傑作となった。同年、ベンがラディカル・フェイスとしてアイ・アム・ロボット・アンド・プラウドとともに来日。全国3ヶ所でライヴを行い、朝霧JAMにも出演を果たす。2010年、3rdアルバム『THE VIOLENT BLUE』が到着。ドイツのMorr Musicを離れ、コネチカット州ニュー・へイヴンのFake Fourに移籍してリリースされる本作は、前作『SLEEP WELL』のB面集のような位置付けでスタートしたが、創作の過程で、全く異なる別個のアルバムとして仕上がった。本作でのテーマは「海」。タイトルの『THE VIOLENT BLUE』とは、ベンが付けた海の別名である。音楽的にも歌詞的にも「海」そして「水」を感じさせるように作られたという本作で、彼らは更なる進化/進化を遂げた。彼らの最大の特徴であるキャッチーなメロディーはそのままに、美しいハーモニーや、幾重にも編み上げられたサウンドスケープは緻密さを増し、そしてなによりソングライティングの成熟を強く感じさせる逞しい楽曲群。 “サウンドによる絵画”とも言うべき、新たなる芸術作品をじっくり堪能して頂きたい。

MARCHING BAND

木曜日, 12月 15th, 2011

2004年に、大学1年生であったエリックとジェイコブが出会ってスタートした、スウェーデンはリンシェーピングのデュオ。2008年8月、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーやヨ・ラ・テンゴなどを手がけるAdam Lasusをプロデューサー兼エンジニアに迎えて制作された1stフル・アルバムとなる『SPARK LARGE』がLAのU & L Recordsよりリリースされる。ギター、ベース、ドラムといったロック・バンドとしてのベーシックなフォーマットに、シロフォン、マリンバ、バンジョー、ヴィブラフォンなどを幾重にも重ねた美麗なサウンドスケープや、ビートルズばりの美メロとハーモニーが、ベル&セバスチャンやザ・シンズなどを引き合いに出されながら、PitchforkやOthermusic、Insoundといったウェブサイト/ショップや、KCRW やINDIE 103.1といったラジオなどを中心に、2008年の新たなホープとして大きな話題となり、myspaceのプロフィール・ヴューは、異例の早さで100万を超えた。さらに、書き下ろしの新曲「Trust Your Stomach」が、同年11月よりUSで公開されたSony Picturesの映画『Nick And Nora’s Infinite Playlist』(主演は『Juno』のMichael Cera)のサウンドトラックに、ヴァンパイア・ウィークエンド、バンド・オブ・ホーセズ、モデスト・マウス、ザ・ナショナル、マーク・マザーズバー(DEVO)らの楽曲とともに起用される。2009年2月、1stアルバムが、デジタル・ボーナストラックであった3曲に、さらに前述の映画挿入歌を追加収録して日本盤化される。rockin’ onやCOOKIE SCENEをはじめ、各音楽誌で絶賛。オリジナル・リリースから半年後の発売にもかかわらず、スマッシュ・ヒット、そしてロングセラーとなる。その後も、Zombieland(Sony Picture Entertainment)、90210(CW)、How I Met Your Mother(CBS)、Scrubs(ABC)、The Ex List(CBS)、My New BFF(MTV)、My Life As Liz(MTV)、Cougar Town(ABC)、Greek(ABC)等々、様々な映画やテレビで楽曲が使用され、知名度はうなぎのぼりに。2010年5月、2ndアルバム『Pop Cycle』リリース。地元スウェーデンのストックホルムにて、ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン、ザ・コンクリーツ、カメラ・オブスキュラなどを手がけたヤリ・ハーパライネンをプロデューサーに迎えた同作は、前作同様、ウキウキするようなキラキラした楽曲に、高度に練りこまれたアレンジ、文学性の高い歌詞、とどこをとっても隙のない、まさに究極、無敵のポップ・アルバムとして高い評価を得る。日本でも、星野源がミュージック・マガジン誌で年間ベストにピックアップしたのをはじめ、ASIAN KUNG-FU GENERATION、LOSTAGE、group_inou、THE NOVEMBERSのメンバーからも絶賛されるなど、大きな話題となる。2013年10月、3rdアルバム『SO MUCH IMAGINE』リリース。前2作でのポップの達人たちとのコラボレーションを経て、再びほとんど二人で制作された本作は、『ザ・ビートルズ(通称ホワイト・アルバム)』を彷彿させる、全21曲、70分超の壮大なポップ絵巻となった。この傑作を引っ提げて2014年1月、初来日が実現。彼らの大ファンであるというCzecho No Republicとのツーマンなど全国6カ所のツアーを成功させる。最新作『HEART JEWEL』には、1stをてがけたAdam Lasusをはじめ、Eli Crews(tUnE-yArDs等)や田辺玄(WATER WATER CAMEL)ら複数のエンジニアがミックスで参加。歌詞においては、デビュー前からの友人であるCheri MacNeil(Dear Reader)とコラボしている。

L’ALTRA

木曜日, 12月 15th, 2011

1999年より活動するシカゴ出身のデュオ(結成当時は4人組)。バンド名はイタリア語で「the feminine other」の意。99年、地元のレーベルAestheticsよりEP「Until Sun」でデビュー。00年、1stアルバム『Music of a Sinking Occasion』(日本盤はTHOKから)、02年、2nd『In The Afternoon』(日本盤はP-VINEから)リリース。シカゴという「音響派」出身ならではの繊細な音作り、ピアノやストリングスの叙情的な響き、そして何より悲しくも美しい二人の唄心が感動的で、「スロウコア」「サッドコア」の新たなる旗手として脚光を浴びる。2nd以後、2名が脱退し、今のデュオ形式となる。2005年には同じくシカゴのHeftyに移籍。同レーベルの看板アーティストでもあるTelefon Tel AvivのJoshua Eustisのプロデュースによる3rd『Different Days』をリリース。日本ではビクターからリリースされ、音楽的のみならずセールス的にも大きな飛躍を果たす。しかし、その後バンドは活動休止状態に入り、07年にはリンゼイはMinty Freshからソロ・アルバム『If』をリリース、ジョセフはソロ・ユニットCosta Musicとして来日、翌年にはアルバム『Lighter Subjects』をリリースするなど、ソロ活動に入る。バンドの存続が危ぶまれたが、08年にバンドとして初の来日ツアーを敢行し、復活を果たす。09年に、ジョセフがブルックリンに引っ越したことで、またしてもバンドの存続が危惧されたが、それぞれで曲作りは継続、昨冬シカゴにてレコーディングを行い、実に5年ぶりとなる4thアルバム『TELEPATHIC』を完成させる。前作に続いてJoshua Eustisをはじめ、Charles Rumback(Colorlist、Via Tania)、Josh Abrams(Bonnie Prince Billy)、Marc Hellner(Pulseprogramming)、Darren Garvey(Cameron McGill)、Elisa Graci(Costa Music)といった豪華な盟友たちが参加。2人の強靭な唄を軸に、様々なコラボレーションを通して生まれた芳醇なトラックが花を添えるという前作からのスタイルが完全に実を結び、5年の不在を埋めてあまりある傑作が誕生した。このアルバムをひっさげて、2011年2月、再来日ツアーを成功させている。

SOFT

木曜日, 12月 15th, 2011

大阪でノイズ・ミュージシャンとしてソロ活動をしていたジョニー・レイネックを中心に、2004年にNYはブルックリンで結成された5人組。バンド名はKara’s Flowers時代から親交のあるMaroon 5のミッキー・マデンによる命名。同年末に自主制作で1st EP『Droppin’』をリリース。未契約、ノンプロモーションという状況にもかかわらず発売直後からオンライン・ショップInsoundのチャートで4位を記録する。翌年から本格的にライヴ活動を開始。すぐにMaroon 5やHard-Fi、Mark Gardnerらのオープニング・アクトに抜擢されUKツアーも敢行。また、一部のブログ・サイトで2005年度書き込み件数No.1を記録するなど、華々しいデビューを飾る。06年に1stアルバム『Hot Club And The Smoke Machine』(FABTONE)をリリース。「Stone Rosesの再来」と評され、日本で1万枚を超える大ヒットを記録する。同年、UDO MUSIC FESTIVAL出演のために初来日を果たす。07年11月、1stアルバムを全曲再録&再アレンジし、新曲を追加したコレクターズ・アイテム『Gone Faded』をリリース。08年3月にはMAROON 5のオープニング・アクトとして再来日。武道館、大阪城ホールなどでライヴを行っている。それから2年の沈黙を経て、ようやく2ndフル・アルバム『DOGS』が完成。プロデュースにYeah Yeah Yeahs、 Grizzly Bear、TV on the Radio、 Beach House等を手がけるChris Coady、ミックスにBlack Rebel Motorcycle Club を手がけるRick Parkerを迎えて制作されたこのアルバムは、前作同様、Stone Rosesを彷彿させるグルーヴに、Oasisの全盛期に優るとも劣らないシンガロング度の高いメロディーを纏った最強のアルバムに。ニュー・レイヴ、マッドチェスター・リヴァイヴァル、ニュー・ゲイズ、そして近年のブルックリン・ムーヴメント、その全ての先駆けとも言っても過言ではない先進的な音楽性と高いファッション性、そして人懐っこさを兼ね備えた稀有なバンドが、満を持して世に問う2作目を決して聴き逃してはならない。現在は、創設メンバーであったギターのヴィンセントが脱退、元Matt Pond PAのマシュー・ダニエル・シスキンが加入。

WIRES UNDER TENSION

木曜日, 12月 15th, 2011

 

NYで活動するヴァイオリン&ドラムのデュオ。2人ともクラシカル・ポストロック・バンド、Slow Sixのメンバーでもある。Slow Sixはヴァイオリニストでありコンポーザーであるクリストファー・ティックナーを中心に2000年頃結成。SlintやDirty Threeを聴いて「インストゥルメンタリストとしての自覚」を動機づけられたという音楽体験と、一方、母親の影響で幼い頃からヴァイオリンに親しみ、ハイドンの弦楽四十奏やアルヴォ・ベルトの交響曲に感銘を受け、さらにNYUで情報科学の修士号を取得し、フルクサスのNam June PaikやAnthony Braxton(※先日Battlesの脱退を発表したTyondai Braxtonの実父)とも共演した電子音楽のパイオニア、Richard Teitelbaumに師事しプログラミングを学ぶ、といった経歴を持つクリストファーは、最初1人で音源制作を始めていたが、NYでメンバーを募り、その後、Antony & The JohnsonsやRufus Wainwrightのストリングス・アレンジメントも務めるMaxim Mostonらを迎えたコレクティヴとして本格的に活動をスタート。04年に、Dirty ProjectorsやHere We Go Magicなどを輩出したWestern Vinylからアルバム『Private Times in Public Places』でデビュー。07年にクラシック・レーベルであるNew Albionから2nd『Nor’easter』をリリースするも、また古巣Western Vinylに戻り、10年1月に3rd『Tomorrow Becomes You』をリリース。一時は9人まで増えていたメンバーも、この段階で、セオ・メッツを含む5人組となる。クラシックをはじめ、ポストロック、ジャズ、サイケデリックなど様々な要素を想起させるクロスオーヴァーな音楽性と、クリストファーの確かな作曲能力と挑戦的な姿勢が、Pitchfork、Wire、The New York Timesなど各音楽誌紙で、Steve ReichやLa Monte Youngなど現代音楽~ミニマリストや、Owen PallettやAndrew Birdなどを引き合いに出されながら絶賛される。Steve ReichやLa Monte Youngなど現代音楽~ミニマリストを引き合いに出され、Owen PallettやAndrew Birdの作品と比較されて語られる機会も多い。そんなクリストファーの新たなる音楽的実験の場となったのがこのユニットだ。Modest Mouse、Explosions in the Sky、R. Kelly、Bono(U2)、Erykah Badu、The Rootsらを手がけたJohn Congletonによってミックス、 Grizzly Bear、Animal Collective、Sufjan Stevens、LCD Sound System、Dirty Projectors らを手がけたPaul Goldによってマスタリングされた本作は、バンド名そのままに、2人よる緊張感溢れる、野心的なインストゥルメンタル・サウンドがパッケージされている。ヴァイオリンを中心にすえつつ、アグレッシヴなドラムや、コンピュータによる装飾などは、国籍を超え、日本のsgt.との共振を感じさせる。アートワークはThis Will Destroy YouのChris Kingが手がけ、Lymbyc SystymのJared Bellが寄稿している。The BooksのNickによりビデオ・クリップが制作される予定。この記念すべき1stアルバムを、日本のみのエクステンデッド・ヴァージョンとして、日本先行、ボーナストラック付きで、しかも日本のみ独占的にCD化する(本国ではアナログと配信のみ)。